支える会報第34号の主な内容...平成15年4月30日発行


強度行動障害問題を考えるセミナー開催

講演
  大阪府自閉症・発達障害支援センター アクトおおさか
  萩の杜 施設長  松上 利男氏
シンポジウム
   ○ 萩の杜       施設長  松上 利男 氏
○ 南山城学園 翼   施設長  谷本 博司 氏
(強度行動障害特別処遇事業実施施設)
   ○ 堺南通所授産所        浴林 美香 氏

 支える会の強度行動障害問題を考える講演会は皆様のご支援のお陰で今年は6年目になります。
 研修を重ねる中で関係者がこの問題を改善するために最も必要であると認識し待望していた(仮称)自閉症・発達障害支援センターに平成14年度より国の予算が付き(補助単価一施設当たり25、365千円、初年度のみ400千円加算)、現在全国12ヶ所で実施されています。今回はその一つの「大阪府自閉症・発達障害支援センター アクトおおさか」を運営する萩の杜・施設長の松上利男氏が来会下さり『自閉症・発達障害支援センターの役割と今後の課題』について講演して頂きました。引き続き「南山城学園・翼」の施設長 谷本博司氏と「堺南通所授産所」の浴林美香氏が加わり『行動障害を示す方たちへの支援における現状と課題』についてシンポジウムとなりました。
 内容は始めに行動障害の定義や成因、社会参加の状況、地域での暮らしを支えるなど基本的な話のあと本題に入り、
1、センターの役割ー自閉症に特化した生涯にわたる支援システム構築のためのモデル事業の推進
2、事業計画ー相談事業、就労支援コンサルテーション事業、地域生活支援コンサルテーション事業、余暇支援モデル事業、関係施設・機関等への啓発・研修事業、連絡協議会の運営
など多岐にわたる取り組みを具体的に分かりやすく紹介して頂きました。
 続いてのシンポジウムでは行動障害を示す人の8割が自閉症であることや、現場で日夜真剣に取り組んでおられる様子などを話して頂き大変充実した内容となりました。参加の皆様も熱心にメモを取り聞き入っておられました。今後も皆様の要望や時の問題を取り上げて提供できる研修の場でありたいと思っています。      (速籐


強度行動障害問題を考えるセミナーに参加して
 
 今回のセミナーでは、支援費という新たな制度の中での今後の問題点と課題を3人の素晴らしい講師の方々からお聞きすることができました。
 はじめに「大阪府自閉症・発達障害支援センター アクトおおさか」の、萩の杜施設長の松上利男先生の「自閉症・発達障害支援センターの役割と今後の課題」についての講演があり、次に京都にある南山城学園「翼」施設長の谷本博司先生による「行動障害を示す人たちへの支援における現状と課題」について、最後に堺南通所授産所の浴林美香先生による「支援費制度化における強度行動障害を示す人の立場について、今後の課題」について意見発表がありました。

 松上先生の講演は、まず初めに「行動障害の定義、成因、自閉症と行動障害」についての説明がありました。そこでは、自閉症の正しい理解が幼少期から出来ていないために間違った対応・関わりが原因となり、それが蓄積・誘発されてしまった障害=強度行動障害であるという説明がありました。
 学校を卒業し、つながったシステムがないために常に新しい環境に戸惑い混乱している状況の中で作業所・施設へと移行します。そして幼少期からの一貫した引継や対応がないために、施設という母体が強度行動障害を作り出してしまっているという現状の説明もありました。
 それを回避するためにも早期療育支援体制の確立(特に18歳以前での支援が必要)が望まれます。今後の課題としては正確な診断のできる児童精神科医と医療機関、療育機関、そして家族や本人に対する支援機関の充実、専門スタッフの増員等が上げられます。そして、それぞれの機関が連携を持って長期にわたるサポート体制を築くということが最も大切な課題であるとも話されました。
 そこで高槻市にある社会福祉法人・北摂杉の子会、大阪府自閉症・発達障害支援センターは、これらの現状課題を解決していくために地域・行政・学校教育と連携をとり、自閉症に特化した生涯にわたる支援システムの構築を目指して開設されました。大阪では先駆的な支援システムであり、療育から学校教育、教員指導など教育委員会との連携、そして就労支援事業、余暇支援モデル事業等など自閉症本人と家族をとりまく関係者全てが連携して支援していこうという事業だということです。
 松上先生の講演をお聞きし、再度実感したことは、これからのサービスは、自閉症の方を正しく理解することは大前提として、一貫した連携システムの中でご本人はもちろんご家族が安心して暮らしていくことの出来る場を提供する、資源活用の拡充、そしてそれを地域の中で選択・実現する事ができる機関を目指すという点に深い感銘を受けました。

 次にお話しされた谷本博司先生の運営されている「翼」は知的障害者入所更生施設で、開所されてまだ4年目という中、積極的な活動を展開されています。
 屋外作業、喫茶室、スヌーズレンルーム等など細部にわたり、構造化によって分かりやすく、快適に過ごすことが出来るように工夫されていました。また、特徴として、ユニットケアという小単位での生活環境の重視、職・住分離を進めているとの事です。
 又、ここでは強度行動障害特別処遇事業を開所当初から行っており、3年事業で、現在は2期目の対象者を受け入れている過程にあるとの事です。半年に1回、更生相談所による判定、更生相談所・措置機関・「翼」担当職員によるケース会議を実施し、関係機関との連携のもと、行動障害の軽減に努めているそうです。
 現状としては、3年が経過しても行動障害が軽減されるケースばかりではなく、地域に帰れない(地域に資源が無いために帰れない)というケースもあるようです。ここでは地域福祉に重点をおくことによりホームヘルパーの育成(自閉症の学習会を年2回)や地域資源を増やしていくためにケアマネージメントによるサービス調整会議やケア会議などを実施されているとの事です。
 これからのサービスは地域福祉に帰すと提言されているものの、現状としてはまだまだ資源が不足している中でご本人の選択肢が無い、そういった状況は払拭されていません。その為にはやはり私達が啓発していく必要もあるということを痛感しました。

 そして、最後に堺南通所授産所の浴林美香先生は、この4月より措置制度から支援費制度へと移行された中で、特に強度行動障害がある知的障害の方たちへの支援体制が厳しいとされる現状、問題提起、そして今後の課題を詳しく解説してくださいました。
 強度行動障害の方たちが施設(通所)で過ごすには、それだけの受け入れ態勢が必要となるが、(施設整備・職員体制など)そういった特別加算が支援費では通所施設に対して無いという現状の中、予算削減から付随し、その為に生じる利用契約制度において強度行動障害の方が排除されてしまう可能性が更に高くなるのではないか、という点は我々支援者にとっても危惧されるところです。
 強度行動障害という特別なニーズのある方が知的障害という括りのみの中に入っている点も地域の中でサポートしていくことを目標に考えると、懸念されるところです。

*加算対象の行動障害の基準を緩和できないか、又、通所施設も対象にすべきである。
*地域生活支援においても行動障害に対する配慮が乏しく、支給量が決定されても受け入れ体制が不十分であれば実質の利用は困難。

 上記の点を細部にわたり詳しく調査され、問題提起、今後の課題として発表してくださいました。
 実質、この4月から支援費制度は開始されましたが、問題は既に発生しています。市町村自体が対応に追われているという現状もありますが、そのような中で、強度行動障害のある方々が通所施設や入所施設の受け入れの無い地域において、実際に生活ができているのでしょうか?行き場が無い為に住み慣れた地域を離れ生活せざるを得ないのが現状であると思われます。生まれ育った地域で暮らすことが実現できるよう受け皿となる資源整備が必要だと思います。その為にも高槻市のように市と連携して支援体制を持てるように地域と密接に関係をもち進めていくことが必要なのではないでしょうか。
 今後もまだまだ課題が多く残っている支援費制度ですが、本人主体ではあるものの、今まではどうしても本人が介入せず進められてきている部分があったと思われます。今後は利用者主体のサービス提供を行う契約制度であることを念頭におき、現場職員として職員自身も意識改革していかなければいけないところにきていると日々実感しています。            (大石 晃子)


「支援費制度に思うこと」

 4月からの支援費制度が見切り発車され、利用者も事業所もあたふたと過ごす日々が続いていることと察します。支援費制度に対する正しい理解も自分の中に十分なされていないことを承知の上で、今、親として漠然と感じている事を少し書いてみたいと思います。
 大阪市在住ですので、どうしても全身性障害者介護人派遣事業との比較をしてしまいます。
 新制度では一ヶ月の利用計画に基づいて移動介護や身体介護等を受けるというかなり制約の強い制度であると感じています。今迄は介護者さえ見つかればイレギュラーな使い方が可能で、時にはショートステイやデイサービス的利用も出来るオールマイティーな制度でしたので、新制度はかなり使いづらく感じています。そして利用者のメンタルな部分の配慮に乏しく、機能面にばかり目が向けられていて、知的障害を併せもつ方々にはしんどい制度ではないでしょうか。
 又、在宅の障害者は親の介護力を大前提とされている事に危惧します。そのような中で障害者のQOLの向上がどうなされるのか心もとない限りです。又、ヘルパーの資格要件についても質の高いサービスと資格がどこまで結びつくのか懸念されます。障害者の啓蒙・啓発の為にも広く多くの介護者との関わりを願ってきましたが、今後のことを考えるとかなりの閉塞感を抱いてしまいます。
 まだまだ始まったばかりの制度の中で障害の程度や地域格差等で受け取り方も様々だと思いますが、障害者の社会参加、自己実現を可能にし得る支援費制度の確立を切に願っています。                               (岩田)


会費納入のお願い

 2003年度の会費の納入時期が参りましたので、会員の皆様にはお手数をお掛け致しますが、 会費の納入につきましてご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 また、納入の準備が遅れ、お知らせするのが大変遅くなりましたことをお詫び申し上げます。なお、既に納入がお済みの方にはあしからずお許しを賜りますようお願い申し上げます。
      
  問い合わせ
     〒545−0021
    大阪市阿倍野区阪南町5−15−28  育徳コミュニティーセンター内
    TEL 06−6624−2555  FAX 06−6624−2565
  【郵便振替】  00930−9−69598
            大阪府重症心身障害児・者を支える会



第40回重症心身障害児(者)を守る全国大会 岐阜市で開催
大会概要
   と き 平成15年6月28日(土)〜29日(日)
   会 場 岐阜グランドホテル
        〒 502ー8567 岐阜市長良648
         電 話 058(233)1111

    [第一日目]6月28日(土)
       受 付  正午〜午後1時まで
       分科会  午後1時〜5時まで
         第1分科会  「独立行政法人国立病院機構と重症児医療の今後」
         第2分科会  「利用者から見た支援費制度の課題」
         第3分科会  「社会福祉法の理念は現場で活かされているか」
         第4分科会  「養護学校における医療的ケアの課題」
       懇親会  午後五時半〜七時まで

    [第二日目]6月29日(日)
       みんなで語ろう  午前9時〜10時 (自由参加)
       式  典     午前10時〜正午まで

    問い合わせ
    全国守る会事務局 〒154ー0005 東京都世田谷区三宿2ー30ー9
    TEL  03(3413)6781〜3

    岐阜県重症心身障害児(者)を守る会
    〒501ー1114 岐阜市今川24ー3
    TEL  058(230)1657
  



                  2003年度  第10回定期総会の御案内

   日 程    2003年5月26日(月)
           総  会  10:30〜11:30(受付9:30〜)
           情報提供  11:30〜12:00 
           交 流 会  12:00〜14:00 (昼食を共に)

   会 場     長居障害者スポーツセンター 2階講習室
            大阪市東住吉区長居公園1−32
            TEL 06−6697−8681
           (地下鉄・JR「長居駅」下車)

   議 案     2002年度事業報告・会計報告
           2003年度事業計画・収支予算
           その他
           
−交 流 会−


会員の皆さま一人ひとりのお話をお聞かせ下さい。子どもへの思い、困っていること、要望など何でも気楽に話し合いませんか?
「支える会」のこれからを原点にもどって考えてみたいと思います。

   会 場    長居障害者スポーツセンター 2階講習室
と き    12:00〜14:00
   参加費    1,500円(食事代を含む)
   申 込    「支える会」事務局まで郵送又は電話・FAXにて



編集後記
人の世の流れは変われど、季節は巡り緑の豊かさが心和ませてくれるのがせめてもの救いなのでしょうか。
 いよいよ支援費制度がスタートしました。本当の意味で障害者福祉の向上につなげるために、これからどんどん問題点や課題を提起していく必要があると思われます。
 世界は今、不穏な空気が満ちています。最も弱い立場の重症心身障害児・者の声を受け止める世の中こそ平和を大切に思う国のあり様ではないでしょうか。               編 集 委 員 一 同

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